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ちょっと書き直し。
テスト明日までです。長い一週間だった…やれやれ!
+
イギーに連れられて、いよいよDIOの館へ乗り込もうとした、時だった。
SPW財団の男が一人、僕たちの方にすすっと歩み寄ってきた。
手には何故か、カメラが握られていた。
「皆さん、折角ですから、一枚撮っておきませんか」
「…やれやれ。俺たちは観光気分で此処にきているんじゃあねえんだぜ」
承太郎が呆れたような目線をくれると、財団の男は慌ててカメラを引っ込めた。
……まあ、そうだ。
確かに、僕たちは決して観光気分で此処に来たわけじゃない。
だからといって、娯楽要素を一切排除して旅をしてきたわけでもないけれど。
僕は小さい頃、写真が嫌いだった。
常に背後のハイエロファントの存在を意識していた、幼少時代。
万が一写真にハイエロファントが写りこんだら、一体何と言い訳しよう。
それが怖かった。
集合写真でも、僕だけ斜め後ろを向いているものが多い。
もしくはさも嫌そうな表情でうつむいているとか。
傍から見れば本当に奇妙な子供だったろう。
ハイエロファントが恐ろしかったのだ。
他の子供たち、大人、両親、誰にもコイツは見えない。
自分にだけ取り付いている。自分は呪われているのだ、ずっとそう思っていた。
自分と人とは違うのだ。その観念が、ずっと心にあった。
けれど、今は違う。
そう言い切れるようになったのは、つい最近のこと。
この数十日間の、ほんの短い間のことだったけれど、僕は確かに変わった。
奇妙な能力をもった、同じ目的を持つ仲間たち。
初めての出会いに、最初は戸惑ったこともあった。
それでも、僕は今、生まれて初めての温もりを感じているのだ。
夢や幻なんかでなく、それは確かに存在している。
ああ、そうだ、いまなら、今なら、もしかしたら。
奇妙な感覚と共に、僕は一つの衝動に捕らわれた。
カメラを持った男性が、承太郎に頭を下げた。
すまなさそうな表情をしてヘリに戻ろうとしたSPW財団の男を、僕は引きとめた。
「待ってください」
はい、なんでしょう。
男は驚いて此方を見た。僕は一つ呼吸をし直すと、言った。
「すみませんが、一枚お願いしても良いですか」
「おい花京院、てめぇ」
「良いじゃないか、承太郎。観光気分じゃないのは百も承知さ。
でも写真くらい、撮ってもバチは当たらないと思うよ」
承太郎の言葉を遮って、僕は早口で述べた。
普段の僕らしからぬ行動に、承太郎は一瞬驚いたような顔をみせた。
ややあって、一つ溜息をつくと、彼は口を開いた。
「……やれやれ。まあ一枚くらいだったら、構わねえが。
お前らはどうなんだ」
「別に構わないぜェ。なあ」
そうじゃな、ああそうだ。
全員が首を縦に振ったのを見て、承太郎はやおらSPW財団の男に向き直った。
「ということらしい。すまねぇが、やはり一枚頼んだぜ」
「はい、畏まりまして」
ポーズは適当で結構です。男は、ファインダー越しにそう声を掛けた。
それぞれ、思い思いの位置へとついた。
ポルナレフが真っ先に最前に陣取ったので、ジョースターさんが文句をたれた。
イギーが珍しくジョースターさんの膝に抱かれているのを見て、僕はつい口元が緩んだ。
隣にいたアブドゥルも同じ意見だったらしく、二人でこっそり顔を見合わせた。
僕の背後に立っていた承太郎の表情は、いつも通り険しいままで。
これが、僕と同じ目的を持った、初めての同志たち。
友情というより、寧ろ愛しさすら彼らに感じながら、僕は承太郎を嗜めた。
「そういう、仏頂面はよくないよ」
「悪かったな。これが素だ。…そういうテメエは、随分と嬉しそうじゃあねぇか」
「まあね。でも、たまにはこういうのも、悪くないだろう」
「――ああ……そうだな」
一瞬きょとんとした表情を見せた後、承太郎はふと、口元を緩めた。
おや、珍しいな、そう思ったときに、絶妙なタイミングで男が叫んだ。
それではいきますよー、はい、チーズ!
男の掛け声と共に、カシャンとシャッターを切る音がした。
現像が出来たらお届けしますね、と、彼はにこやかに告げた。
+
数週間後、背の高い男が一人、とある墓地に訪れた。
手には一枚の写真があった。
しばらく墓地を進んで、やがて小さな墓の前で、彼は立ち止まった。
墓前にそっとその写真を供えると、彼は手を合わせて、目を閉じた。
「…なあおい、覚えているか。エジプトで撮影した写真だ。
テメエが撮りてえと言いやがった、あの写真がやっと現像出来たそうだぜ。
見えるか?」
静かな墓地内に、彼の言葉はしんと響いた。
なあおい、聴いているのか、お前。
震える声で、彼はそう呟いた。
目じりに奇妙な水滴がたまっていた。零れ落ちないようにするのが大変だった。
それでも大切な仲間に伝えなくてはならないことは、まだあった。
言ってやりたい文句もあった。
そのために、そんなことで気をとられている場合ではないのだ。
「テメエが取りに来ねえから、俺がもってきてやったんだぜ。
結構ここまでくるのは億劫なんだ。電車にしばらく揺られなくちゃならねえんだからな。
感謝しろよ、テメエ。
ほら写真だ、ちゃんと見ろ、おい、お前すげえ良い笑顔していやがる。
何事にも縛られねえ、本当に良い笑顔だ」
テメエで撮りたいと言ったくせに、受け取りもしねえで、お前は。
こんなにいい笑顔で写っていやがるのに、もったいねえ。
写真の中の、永劫変わらない笑顔。
それと同じく、彼たちは仲間だったという事実も、不変。
一番その写真を残しておくことを望んでいたテメエが受け取らないで、一体どうするつもりなんだ。
写真に収められた青年たちの笑顔が、男には奇妙にぼやけて見えた。
ちくしょう、と彼が低く呻いた音は、空気に溶けて、無くなった。
+
後書き(というか、物凄い言い訳)
いや、本当申し訳ありませんでした。別にそういうつもりはなかったんですが。
というかサイトジャンル外ですよね。百も承知で俺は書いたのだ!
花京院が好きすぎて仕方ありません。というか、何か、ね。
花承とか承花とかそういうんでなくて、本当写真の話でした。
4部で承太郎がもっていた集合写真、どういう経緯で得たのかな、と。
何か撮影する隙、あのメンバーじゃあほとんど無いと思うんですよね。
花京院が復帰したのは直前の話だし。
アブドゥルさんが復帰するのと入れ違いで花京院が入院したわけだし…
じゃあ一体いつよ。というわけでこんな話が出来ました。
花京院の幼少時代はハイエロファントが嫌いだったら良い。
イギーに連れられて、いよいよDIOの館へ乗り込もうとした、時だった。
SPW財団の男が一人、僕たちの方にすすっと歩み寄ってきた。
手には何故か、カメラ。
「皆さん、折角ですから、一枚撮っておきませんか」
「…やれやれ。俺たちは観光気分で此処にきているんじゃあねえんだぜ」
承太郎が呆れたような目線をくれると、財団の男は慌ててカメラを引っ込めた。
……まあ、そうだ。
確かに、僕たちは決して観光気分で此処に来たわけじゃない。
だからといって、娯楽要素を一切排除して旅をしてきたわけでもないけれど。
僕は小さい頃、写真が嫌いだった。
常に背後のハイエロファントの存在を意識していた、幼少時代。
万が一写真にハイエロファントが写りこんだら、一体何と言い訳しよう。
それが怖かった。
集合写真でも、僕だけ斜め後ろを向いているものが多い。
もしくはさも嫌そうな表情でうつむいているとか。
傍から見れば本当に奇妙な子供だったろう。
ハイエロファントが恐ろしかったのだ。
他の子供たち、大人、両親、誰にもコイツは見えない。
自分にだけ取り付いている。自分は呪われているのだ、ずっとそう思っていた。
自分と人とは違うのだ。その観念が、ずっと心にあった。
けれど、今は違う。
そう言い切れるようになったのは、つい最近のこと。
この数十日間の、ほんの短い間のことだったけれど、僕は確かに変わった。
奇妙な能力をもった、同じ目的を持つ仲間たち。
初めての出会いに、最初は戸惑ったこともあった。
それでも、僕は今、生まれて初めての温もりを感じているのだ。
…ああ、そうだ。今なら、今なら、もしかしたら。
すまなさそうな表情をしてヘリに戻ろうとしたカメラマンを、僕は引きとめた。
「待ってください、じゃあ一枚お願いしても良いですか」
「おい花京院、てめぇ」
「良いじゃないか、承太郎。観光気分じゃないのは百も承知さ。
でも写真くらい、撮ってもバチは当たらないと思うよ」
承太郎の言葉を遮って、僕は早口で述べた。
普段の僕らしからぬ行動に、承太郎は一瞬驚いたような顔をみせた。
ややあって、一つ溜息をつくと、彼は口を開いた。
「……やれやれ。まあ一枚くらいだったら、構わねえんじゃねえか。
お前らはどうなんだ」
「別に構わないぜェ。なあ」
そうじゃな、ああそうだ。
全員が首を縦に振ったのを見て、承太郎はやおらSPW財団の男に向き直った。
「ということらしい。すまねぇが、やはり一枚頼んだぜ」
「はい、畏まりまして」
ポーズは適当で結構です。男は、ファインダー越しにそう声を掛けた。
それぞれ、思い思いの位置へとつく。
ポルナレフが真っ先に最前に陣取ったので、ジョースターさんが文句をたれた。
イギーが珍しくジョースターさんの膝に抱かれているのを見て、僕はつい口元が緩んだ。
隣にいたアブドゥルも同じ意見だったらしく、二人でこっそり顔を見合わせた。
僕の背後に立っていた承太郎の表情は、いつも通り険しいままだ。
「そういう、仏頂面はよくないよ」
「悪かったな。これが素だ。…そういうテメエは、随分と嬉しそうじゃあねぇか」
「まあね。でも、たまにはこういうのも、悪くないだろう」
「――ああ……そうだな」
承太郎がふと、口元を緩めた。
おや、珍しいな、そう思ったときに、絶妙なタイミングで男が叫んだ。
それではいきますよー、はい、チーズ!
男の掛け声と共に、カシャンとシャッターを切る音がした。
現像が出来たらお届けしますね、と、彼はにこやかに告げた。
+
数週間後、背の高い男が一人、とある墓地に訪れた。
手には一枚の写真があった。
しばらく墓地を進んで、やがて小さな墓の前で、彼は立ち止まった。
墓前にそっとその写真を供えると、彼は手を合わせて、目を閉じた。
「…なあおい、覚えているか。エジプトで撮影した写真だ。
テメエが撮りてえと言いやがった、あの写真がやっと現像出来たそうだぜ。
見えるか?」
静かな墓地内に、彼の言葉はしんと響いた。
なあおい、聴いているのか、お前。
震える声で、彼はそう呟いた。
目じりに奇妙な水滴がたまっていた。零れ落ちないようにするのが大変だった。
それでも大切な仲間に伝えなくてはならないことは、まだあった。
言ってやりたい文句もあった。
そのために、そんなことで気をとられている場合ではないのだ。
「テメエが取りに来ねえから、俺がもってきてやったんだぜ。
結構ここまでくるのは億劫なんだ。電車にしばらく揺られなくちゃならねえんだからな。
感謝しろよ、テメエ。
ほら写真だ、ちゃんと見ろ、おい、お前すげえ良い笑顔していやがる。
何事にも縛られねえ、本当に良い笑顔だ」