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一度だけ、コソ泥を騙すためにビルの屋上から足を滑らせたことがあった。読み通り、悪になりきれない怪盗は俺の身体を救おうと後に続いて飛び降りた。俺は容赦なくその顔に麻酔銃をぶち込んだ。かわされてしまったけれども。それも今となってはいい思い出だと思っている。
今回はまったくもって、俺の不注意だった。強いビル風に煽られて、俺はあっという間にフェンスのないビルの屋上からフリーフォールを始めてしまった。そのときの怪盗の表情といったら、滑稽すぎて新聞の一面、二面、三面、あらゆる角度から写真を撮りつくして、すべてのスペースを埋め尽くしてやりたいほどだった。あんな顔滅多にお目にかかれるもんじゃない。俺は今から死ぬかもしれないから、もう二度とお目にかかれないといったほうが正確なのかもしれない。
人間死ぬ間際に「走馬灯のように人生が蘇る」なんて言うけれど、実際そんなことしてる暇はないんだなあと俺は痛感している。落ちてゆく感覚。かつて幼馴染と共に犯罪に巻き込まれたジェットコースター、あれのクライマックスの箇所での感覚もこんな感じだった。心臓が何かに鷲掴みにされるような。授業中にあれをやってしまって、よくびくんと体が跳ねて周囲に笑われたことがある。そのあとばつの悪い顔をしていると、教師が口先だけで注意をする。俺はすみませんと謝って、それで終わりだった。
(翼が開いてる)
落下しながら俺は見た。俺が先ほどまで追いかけていたコソ泥は、今必死の形相で俺を追っている。自由落下する体に、はたしてやつの白い翼は追い付けるのだろうか。俺は目を閉じた。世界が黒に覆われた。
黒というカラーに抵抗を感じるようになったのは、いつからだったか。もう何年前のことになるのだろうか。俺が身体を取り戻したのはいったいいつのことだったろうか。走馬灯のようによみがえるはずの人生がよみがえらずに、俺は至極もどかしかった。もう俺が地面に到達するまであまり時間もなさそうだ。
と思っていたら、右足に衝撃を感じた。目を開ければ、どうにか追いついた怪盗が俺の右足だけをかろうじてつかんで、息を切らしながら体勢を直そうとしていた。俺はそれが夢か何かの出来事のように思えたので、ぼんやりとされるがままになっていた。ただ少し頭に血が昇ってきたのが不快だった。
怪盗はふらふらと、本当に小さなビルの屋上まで俺を運ぶと、屋上に放置されていた襤褸切れの上に、俺の身体を横たえた。俺は生きている実感を噛みしめるとか、お礼を言うとか、そんなことを全く思いつかずに、ただぼうっと眼の前で泣きだした怪盗の姿を見つめていた。
「本当に死ぬかと思ったんだ!」
気障ったらしい口調も、何もかもすべてかなぐり捨てて、怪盗は母親を失くした子供のようにわあわあと泣いていた。ご自慢の片眼鏡は無残に汚い屋上の上に投げられて、マントは泥で汚れていた。白い翼と言われるハンググライダーも、片隅でぐしゃりと潰れていた。それから怪盗は俺のことを無理やり抱きしめた。お互いの骨が軋みそうになるくらいまで俺を抱きしめた。俺は圧力で潰れてしまうと思った。その痛みが、俺にまだ生命があることをじんわりと感じさせて、なんとも言えない気持ちで、俺は怪盗に抱きすくめられていた。
それからお互いの立場のことを考えて、それが酷く滑稽で、俺は思わず笑った。
追う者と追われる者の奇妙な関係
だってあたしはナミちゃんみたいに凄惨な過去を背負っているわけでないし、まあ辛いことはたくさんあったけれど、それに仲間になったのだって一番最後だ。もうすぐグランドラインに突入するってみんな喜んでいるけど、あたしは彼らと共有した思い出が一番少ない。カヤさんのお話を聞いたってゾロの砂糖のおにぎりのお話を聞いたってドン・クリークの話を聞いたって、「そんなこともあったわね!」といえない。いつだって「そんなことがあったのね!」なんだ。
「おい、何してんだ」
あたしが唇を尖らしていると、ウソップ君のお手伝いをしていたゾロがやってきた。あたしより三つ上のゾロは「なんか面白い顔してるぞお前」、と言ってあたしの鼻をつまんだ。大人っぽいことして腹が立つ。どうせあたしは今のメンバーで一番年下だけど、だからってどうしてみんないつもこうなのよ。一つ年上なだけのルフィもウソップも、「俺の方が兄貴だな!」って言ってあたしのこと子供扱いするし。それが決していやってわけじゃないから余計に悔しい。むしろ心地いいなんて思っちゃう自分がいやだわ。
じゃあいっそのこと子供らしい振る舞いをしてやろうと思って、あたしは「やめてよ!」と駄々っこのような声を出して応戦する。ゾロはカラカラと陽気に笑うと、いつもの指定席にごろんと横になって昼寝を始めた。あたしも勝手にご一緒することにした。あたしが近くに寄ってきたのを見ると、ゾロが片腕を貸してくれて、あたしは遠慮なくそこに頭を乗せた。
「あらあら仲がいいわねえ」
ナミちゃんの明るい声が上から降ってきた。あたしは目を瞑って寝ているふりをする。ばれていたってかまわないんだ。どうせナミちゃんはサンジと仲良くしているんだからいいじゃない。子供っぽい嫉妬の感情がかすかな熱を含んでゆらゆらと立ち昇る。やり場のない思いを、ゾロのがっしりした腕で寝返りを打つことで、ごまかした。サンジのかすかな笑い声が聞こえた。
これがもしあたしじゃなくて、ナミちゃんがゾロに腕まくらなんてしてもらっていたら、いったいどんな反応をするのかしら?サンジは絶対ゾロのことをミンチにおろしてしまうんだろうな。そう、あたしだから、寝転がっているのがあたしだから、今は笑っているんだろうな。
そう考えたらなんだか本当に悔しくなって、目元に涙がにじんだ。
直後に発されたルフィの「変なもの見つけた!」という叫び声が、こんなに救われるものだったなんて。あたしは素早く身を起しながら、ゾロと一緒に甲板から身を乗り出した。あんまり海に落ちそうなくらい前に出たので、ゾロが「おめーはカナヅチになっちまってんだろーが」とあたしを引き戻した。
もし自分が海でおぼれたら助けてくれるのはきっとゾロなんだろうな。
こんなくだらないことに執着しようとしている自分が情けなくて、あたしはただまっすぐ青い海を見た。
+
昔書きたかったサンジの夢小説ネタ
今でもこのヒロインちゃん使って脳内妄想は進んでいます いやあ楽しいねえ
といったら 唇を噛み締めて下を向いてしまったお前の小さな姿に
心が締め付けられるような心地がして
上手く呼吸が出来ないような
そんな感じになってしまって
頭を撫でてやろうと手を伸ばして
途中で止めて
手を引っ込めた
+
王様は海馬の扱いに困っているくらいで良いと思います
王様←←←海馬みたいな…闇海だよ!それでもちゃんと!こんなんだけど!
常に1キロ離れている そんな距離感が理想の闇海です
あと携帯買い換えたら快適です
ついでに設定も少し補足。
・ハルヒたちは帰宅済
・マスターキーを現在所持しているのは古泉(ハルヒに預かった)
・キョンが残った理由:部室の掃除
・古泉が残った理由:手伝ったあとオセロでもやろうかと思った
・現在の時刻:19時30分
++
「で、俺に一体何をさせるんだ。掃除か?パシリか?なんだ?」
「いえいえ、そんなことはさせません」
テーブルに肘を付き、指を組んで、その上に顎を乗せながら、にこやかに古泉は言った。俺はあからさまに嫌悪感をむき出しにしながら、古泉がこれから所望するであろうことを予測した。…のだが、ひょっとするとひょっとしたら、アブノーマルな罰ゲームをこいつは望んでいるかも知れないという恐ろしい仮定に行き着いてしまって、俺は考えるのをやめることにした。
古泉はしばらく楽しそうに俺のことを見つめていたが、やがて一つ微笑んでから、言った。
「では、僕と手を繋いで下さい」
「は?……それだけ、か?」
「ええ、それだけです。ただし、僕が『よし』というまで離してはいけませんよ。
離したら、そうですね、これから一ヶ月間は僕にコーヒーを奢って頂きましょう。
缶コーヒーではダメですよ。駅前の、スターボックスのエスプレッソが好ましいですね」
「………」
「おや、ご不満ですか?もう少し過激な罰ゲームがお好みなら」
「お好みじゃあない」
俺は露骨に嫌そうな顔を作ると、古泉は「そうですよね」といってくすくすと笑った。ああ、こいつの笑い方が気に食わん。なんだってこう癪に障るような笑い方しか出来んのだ、この男は。
しかし、案外あっさりした(十分濃いが、俺が想像していたものよりははるかにまともだった)罰ゲームに驚いたのは事実だ。いや、だからといって、俺はもっと過激なものを望むわけではないし、寧ろこれくらいで丁度良かったと思っている。手を繋ぐくらいで済むのなら、まあ良いだろう。
俺は先ほどの真剣勝負で汗ばんでいた右手を軽く制服で拭くと、覚悟を決めてテーブルの腕に投げ出した。俺だって男だ。右手の一本や二本、好きにしろってんだ。
「おや、潔いですね。珍しい」
「なんだ、悪いか」
「いえいえ、全く。それでは失礼致します」
そっと、古泉の左手が伸びてきた。一瞬テーブルの上の手を引っ込めたくなったが、歯を食いしばって耐えることにした。古泉の手はしばらく宙を彷徨ったあと、一瞬躊躇って、まずはそっと俺の指先に触れた。もどかしい、さっさと繋いでしまえば良いのに、ちくしょうが。
指先同士が軽く触れ合う。目を逸らそうかと思ったが、古泉の綺麗な爪の形に思わず目を留めた。俺は女性のお洒落にあまり興味が無いので良く分からないが、美しい弧を描いた古泉の爪。淡いピンクがなんとも優しい。俺がぼんやりと爪を見つめていると、古泉は俺の指の間にするりと自分のそれを滑り込ませた。それから、母親が生まれたての赤ん坊をそっと撫でるように、幾度も幾度もそっと指をさすった。なんとも言えないくすぐったさが、俺の指に走る。
「綺麗な指ですね」
「は?」
「とても素敵だと思います。うらやましいです。滑らかで心地が良くて、いつまでも傍に置いておきたい」
「何言っているんだ、お前の方が細くて綺麗な指をしてんだろ」
俺の反論に、古泉は困ったように微笑んだ。
「理解して頂けないというのは悲しいですね」
「…わけがわからん」
俺は深く溜息をついた。繋いだ手が暑苦しい。こんな馬鹿げた罰ゲーム、さっさと終わりにならないものか。それにしても悲しいやつだ、バカなヤツだ、古泉は。何が悲しくて罰ゲームで男の手なんかを握りたがるのか。俺には全く理解できん。理解しようとも思わないが。
古泉は慈しむようにもう一度俺の手をそっと撫でると、言った。
「では、さて、この状態で、もう一度オセロでもやりましょうか」
「はぁ!?」
「貴方が勝ったら、この罰ゲームは終わりということでいかがでしょう」
「お、おう。受けてたってやろうじゃねーか」
「しかし、もし貴方が負けたら、またもう一つ試練を追加しますからね」
「勿論だ!」
俺は深く頷き、古泉も「良いでしょう」と微笑んだ。
++
後書き
取り合えず二つ目おしまい。三つ目はもしかするとほんのりエロいかも。
精々16禁くらいだと思いますけど(私の年齢的な意味で)
いやあ16歳過ぎると色々かけていいですね。書いたらいけないと思うけど。
ねみっ
下の記事キ/ョ/ン/古の話題なのにキョンが襲い受けってどういうことだよ…
古泉ですよスイませェん
キョンは限りなくノーマルで問題ないと思います
寧ろ古→→→→→→キョンみたいなのでも良いかと
花承みたいなものですかこれわ
なんにしても一方通行のゴリゴリしたドス黒い恋愛はかわいいねぇ