[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
+
「お前より城乃内くんの方がよっぽど良いぜ」
海馬の細い腰を掻き抱いて、「おい、何しているんだ、」と海馬が身を捩った、そのときにオレはこう言った。
もぞもぞ動いていた海馬はぴたりと動きを止めた。
オレは海馬を見上げた。ヤツは随分とマヌケな顔をしていた。
取り合えずオレは海馬の腰に回していた手を解いた。海馬はほうけた顔で此方を見ていた。
「何を」
「だから、抱き心地。城乃内くんは温かいし、幸せな気分になれるけど、お前じゃ無理だぜ」
「な」
「あと城乃内くんは嫌がらないしな」
そう告げる間に、海馬はぽかんと開いていた口をすっかり閉じていた。ついでに目も伏せていた。
オレはちょっと言葉を切って、海馬が憤慨するのを待った。
「凡骨と一緒にするな」とかなんとか、ぎゃあぎゃあと喚き散らすのを待った。
海馬はしばらくそこに突っ立っていた。オレも黙って立っていた。
やおら、海馬は回れ右をすると、ツカツカと歩きだした。
あれ?
「………海馬」
「オレのことが」
オレが呼び止めると、海馬はゆっくり立ち止まった。それから返事をした。
その声がかすかに震えていた。掠れていた。オレはぴたりと動けなくなった。
こんなこと、予想外だ。
「嫌いなら、嫌いと、はっきり言えば良い」
最後に、そう呟くようにそう言って。海馬は、一瞬だけオレの方を振り返った。
切れ長の青い目の尻に、水滴が溜まっていたかどうかなんて知りたくも無い。
白いコートをばさりと翻して、海馬は去った。
オレはといえば、追いかけることも出来ずに、ただそこに立っていた。
すんごいどうでも良い話です。本当にどうでも(wry
高校生男子って何話しているのだかね。
+
「君、本当に背が高いよな」
僕は風呂上りの承太郎を、ソファから見上げた。承太郎は此方を見下ろした。
深い黒髪からぽたぽたと滴が落ちて、絨毯にしみを作った。水滴くらい軽く拭きとって来いよと思いながら、僕はその染みを爪先で突いた。
承太郎は真っ白なタオルで乱暴に髪の毛を拭きながら、しばらく僕の方を見てから、やがて鼻を鳴らした。
「なんだ、手前が小さいだけだろうが」
「へ、」
何を言ってんだ僕は一応170センチちょっとあるんだぞ何が小さいってんだ、これは日本人の平均身長くらいだし大体ね君の大きい小さいってのは僕らとちょっと違うんだ、だって君ハーフだろう、ジョースターさんも承太郎も190センチあるほうがおかしいんだよ。
まくし立てると、承太郎は再び鼻を鳴らした。その仕草で僕の自尊心は酷く傷つけられた。そりゃあ君にとっては些細なことだろうし、どうでも良いことかもしれないよ。しかし僕にとっては大問題だ。
街で君たちと一緒に歩いていると僕が一番小さく見られて、「まあ可愛い」なんていわれた事だってあるんだ。全くイヤになる。
水を飲もうと僕に背中を見せた承太郎へ、すっかり気配を消したハイエロファントを近づかせた。そのまま、無防備な彼の膝の裏を思いっきり突いてやった。
うおっと情けない声を上げてよろめいた承太郎に、僕は高笑いをしてやった。
「油断したな、承太郎」
「てめ、何をしやがる」
「敵に背中を見せるのが悪いんだ」
野郎、と承太郎は苦笑いして、ハイエロファントの額を人差し指で弾いた。
ダメージはスタンド使いの僕に反射されて、僕の額にもじんわりと痛みが広がった。
花(→)承だと思います。ところで花承って何て読むのだろう。かじょう?
追記からどうぞ。
とてもよく解らない話なので注意。自分でも何書いたのか良く解っていません。
死んでしまった典明と生きている承太郎の話
ちょっとだけ典明の過去を捏造。というか、典明ママのことを捏造。
典明ママは40前後の上品そうな小母さんだとおもう。
典明パパも40前後の、頑固なお父さんだったら良いとおもう。
そして多分、典明の家庭はとても裕福。
+
僕は、大学に通って、将来は医者か何かにでもなろうと思うんだ。レントゲンを使わなくたって、ほら、スタンドを使えば、患者の悪いところがわかるだろう。僕のハイエロファントグリーンの能力で。そうだ、君は助手をやればいい。スタープラチナを使えば、きっとどんな難解な手術だって楽にこなせるだろうさ。僕たち良い名医コンビになれそうだね。どうかな。
そういって笑ったお前の言葉に、俺は一体何と返したのだったかな。
承太郎は静かに故人を想った。あいつは承太郎の何倍も良く喋るヤツだった。ぺらぺらと、よくもまああんなに舌が回るものだ。しかし決してあいつの話は嫌ではなかった。下らないことも言うけれど、どうでも良いこともたくさん話すけれど、それでも嫌悪感を抱いたことは一度足りとて無かった。でも自分は口下手だから、大して上手い言葉も返せなくて、大半のことは「うるせえ」と一蹴してしまっただろう。時には耳を塞いだこともあったかも知れない。あの時はまだ、お前が死んでしまうなんて考えもしなかった。漠然と、俺たちはきっと生きて帰れるという甘い考えがあったのだ。承太郎は若かった自分をあざ笑った。
今はもう、ほんの僅かしかあいつのおしゃべりを思い出せない。
あいつは自分の趣味の話を良くしていたけれど、どうしてそんな趣味を持っているのかとか、いつからそれに熱中するようになったのかとか、そんなことすら覚えていない。そして、もう一度それを語ってくれるお前はもうここにはいない。きっとまだあいつの頭の中には、俺たちに話して聞かせる話題がいっぱい貯めてあっただろうに、そのストックを使い切ることなくあいつはいなくなってしまった。
彼の母親は、自分の息子が酷くおしゃべりだったことを知ると、ひどく驚いた。父親は既に家の奥へと篭もってしまったが、時折奥の方から鼻をかむ音が聞こえてきた。その度にジョセフと承太郎は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。母親はどこからかアルバムを取ってくると、テーブルに広げて二人の来客に見せた。
ほらこの子、全然笑っていないでしょう。これが幼稚園に入園したとき。こっちが小学校に入学したときの。ね、どこを見ても笑わないの。旅行に行っても、遊園地につれていっても、全く。楽しくなさそうなの。どこに行きたいとか、どんなもので遊びたいとか、全く教えてくれなくて、凄く無口で大人しい子供だった。だからあなた達の話を聞いてとても嬉しくなりました。あの子がそんなにおしゃべりだったなんて。きっとあなた達は、あの子にとって一番の理解者であってくださったのだと思います。
息子と同じ、凛とした目の母親は、二人を見据えた。それから微笑んで、そしてちょっとだけ泣いた。ジョセフが何ごとか母親に告げている間、承太郎は静かにアルバムをめくった。一番最後のページに、写真一枚分のスペースが空いていた。そこには高校の卒業式での写真を飾るつもりだったという。ジョセフと承太郎は、エジプトで仲間たちと撮影した写真を、丁寧にそこにおさめた。写真の中の彼は小さく微笑んでいた。
彼は17年間の間にため続けたたくさんの想いを、ほんの少しばかり前に知り合った俺たちに、たくさん話した。ひと月なんかでは語りきれない、たくさんの彼自身の話を。
きっともっと伝えたいことがあったろうに。もっと知って欲しいことがあったろうに。もっと、もっと、長い年月をかけても終えられないくらいの、たくさんのことが。
承太郎の瞼の裏で、楽しそうに口を開く彼の姿が、ぼんやりと滲んだ。