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 菊の家の柱時計が、ちょうど0時を指している時のことでした。
周りのおうち――王兄ちゃんや、ヨンスたちのことです――がぐっすり寝入っている時、
菊は自分の国で可決されようとしている新しい法案のまとめを読み、首をかしげていました。

「この法案は よくわかりませんね。
 私たちにとって 何かいいことがあるのでしょうか?」

 そのとき、菊の家の玄関から物音がしました。あやしく思った菊は立ち上がり、そっと様子をうかがいました。
そこには、菊のお友達であるフェリシアーノが、ちょこんと座っていました。

「ひっ!?
 あ ああ こんばんは フェリシアーノ君。
 いつのまに 私のおうちに 入ったのでしょうか?」
「ボンジョールノ 菊。 って 菊の家は もう真夜中か~。
 あのね 俺 菊にたいせつなことを 教えに来たんだよ」

 フェリシアーノはいつもののほほんとした顔ではなく、緊張感と、涙の跡の残る顔でした。
菊は少し面食らったあと、「どうぞこちらへ」とフェリシアーノを客間へ案内しました。
珍しく、フェリシアーノは「いいよ 玄関先でいいんだ」と少しだけ抵抗しました。
いつもだったら、喜んで菊の部屋に上がったのに。

「どうしたんですか フェリシアーノ君。
 だいたい あなたが真夜中に訪ねてくるのも珍しいのに」
「菊のおうちで可決されようとしている法案のためにね
 おれの家で起こった 王とのトラブルのことを教えに来たんだ。
 もし 菊の家で その法案が通ってしまったら
 菊のところでも 王とトラブルが起こるかもしれない。
 それがいやだから 来たんだ」

 フェリシアーノはこの間菊から教わった「正坐」をすると、真剣な顔で話し始めました。


「4月12日の朝のことだよ。
 ミラノの街の一角で、10枚ほどの赤い旗が風にはためいて、
 道路には100人ほどの王のところの人々が、警察と闘いを繰広げていたんだ。

 いつもと同じ朝のはずなのにさ、道の真ん中では車がひっくり返ってて、武装した警察隊がいた。
 俺に対しての、ううん、ミラノに対してみんなが起こっている、みたいなカオスだったんだ。

 ミラノは俺の家で一番の産業都市でさ、俺の商業的なモーターでもあるんだ。
 で、他のみんなのところの大都市みたく、俺の家にもチャイナタウンがあるの。
 王のとこからの移民たちが管理運営している一画だよ。
 彼らは最近10年ほどのうちに、商店や住居アパート、革製品の小さな工場、靴の製造所、
 レストランなどを買い取っていったんだ。

 10年前まで、ミラノ市民は中国系の人々を快く受け入れていた。
 そうしたらその後、王の家から荒々しいまでの移民があったんだ。
 彼らは100人、1000人と大挙して、それぞれに兄弟姉妹や、あらゆる「親戚」を連れて到着した。
 こうするうちに、ミラノにおける王の言葉は、俺の言葉の次に多く使われる言葉になったんだ。

 金銭を生み出すあらゆる現場には、連盟や結社ができるよね。
 お互いの有利を計り、守りあう仲間のことだよ。菊ならわかるでしょ?
 王の系統の移民の中小企業も当たり前みたいに結束したの。
 …そしたら、まもなく多くの俺のところの人が、彼らを「上海マフィア」と呼ぶようになったんだ。

 4月12日の朝、俺は、王の商人たちが俺の法律を守っているかどうかを確かめるために、
 書類や税金の支払いを調べようと思ったんだ。

 いっぱい違法がみつかった。
 警察と俺が商人や店主らに罰金を払わせようとしたんだけど、
 そのときミラノのチャイナタウンの中心地であるパオロ・サルピ通りのアパートから、
 何百人もの王の人民たちが、何の前ぶれも無く突然姿を現したの。

 警察官と俺たちは取り囲まれて、数人の中国人が道路を塞ぐために車をひっくり返し、
 ――それから騒乱が始まったんだ。
 ミラノでは、俺たちとと外国人の間でこうした騒乱が起きたことは、今までなかったのに。

 警察がこん棒を使い、王のとこの女性が殴られて取り押さえられると、彼らの反応は荒っぽさを極めた。
 中国の赤い旗が10枚ほどひるがえり、この騒ぎのせいで、
 チャイナタウン全体とその周辺の交通が、数時間にわたってマヒしてしまったの。

 夕方ごろ、王がやってきてさ。
 王は俺たちが王の人に乱暴したって、正式に非難したんだ。
 だけどそれに続けて、王の人たちに、
 家なり店なり、バッグや靴を作る仕事場なりに、戻ってくれって頼んだの。

 ミラノは最近、アフリカやイスラム系の人びとの暴動を怖がってたんだけど…、
 そうじゃないところから暴動が起きてしまったんだよ。
 この先10年ほどで、王は世界一の大国になるかもしれない。
 勢力が増すに従って、こうした騒動の可能性も増えていくのが人間社会だって、
 それを心配する人も多くいるんだ。
 世界はいっつも変わるから、ミラノみたいな大都市が、それに無縁だとは思えないし。

 だから、今回の出来事を見て、
 「これからのミラノ」がもう始まっているのかな、って、俺は思ったんだ」

 気がつくと、フェリシアーノはとっくに靴を履いていて、菊の家の庭先に降りていました。
「アリーヴェデルチ!」と手を振ると、彼は勢いよく駆けて行ってしまいました。
菊は茫然とその後ろ姿を見送った後、彼の残した言葉を反芻しました。

 それから、菊のところの偉い人たちに、「国として」何かを言ってやらないと。
そう思って、筆をとったのでした。

(原文とまとめ)
原文:ほぼ日刊イトイ新聞 さま
日本があぶない!:国籍法改正案まとめWiki さま

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